生死を考える視点
ゆにこさんの質問はこうでした。
『生きてるって、なに? 死んだらどうなるの?』
調べていくうちに分かったのですが、これはゆにこさんに限らず、太古の昔から人類が抱き続けてきた、大きな命題だったのです。正確にはこの2つです。
- この世界はどうやってできたのか
- 私たちはなぜ生まれ、なぜ死ぬのか
ゆにこ、いっしょ
そうですよ、ゆにこさん。人はずーっと大昔から、ゆにこさんと同じことを考え続け、試行錯誤し続けているのです。
生死をどう捉え、どう考えるか。これを死生観と言います。ヒトの死生観を形成し、ダイレクトにゆにこさんの質問に答えてくれる、生死を考える分野は以下の三つになるでしょう。
- 宗教
- 哲学
- 生物学
あ~、たしかに! 宗教は神話があって分かり易いですよね。どうやって今の世界ができた、とか、天国とか地獄とか、死んだらこうなるっていう話、必ずありますもんね
そうですね。世界創生は多くの神話で見受けられますし、日本神話の『黄泉の国』、エジプト神話の『死者の審判』、死のストーリーもやはり盛り込まれています。
哲学はなんかもっとこう……ヒトの存在?について考えてる感じだし
我思う……ゆえに我あり
デカルトですね!
なんか、宗教批判?みたいな感じもあったような
神は死んだ
ニーチェですね!ゆにこさん凄いです!
なんでこいつ、こんなことは知ってるんだよ
どや顔すごいな
ただ今回、このページでは生物学のお話をしていきます。
発祥の順序だと、1,宗教 2,哲学 3,生物学 となるのですが、今回はこの流れに逆行していきましょう。
生物学、楽しそう
ね。なんていうか一番、生死に対する答えっぽいっていうか
これからお話していきますが、その前にこれだけお伝えさせてください。
はい?
『なぜ生まれ、なぜ生きて、なぜ死ぬのか』 生死をどう捉えるか、という『死生観』は言わずもがな人生を貫く大きなテーマになるでしょう。
遥さん、桜さん、それにゆにこさん。
……はい
はい
あい?
みなさんはまだ幼い。これから色んな体験をし、その度に選択を迫られるでしょう。では何を基準に、そのときどきの判断をするのか……。
『世間の価値観や常識』でしょうか? 『親や教師の言うこと』でしょうか? 『本に書いてある立派そうな情報』でしょうか?
違いますね。そのどれもが”判断材料”に過ぎません。どこまでいっても、決めるのはいつだって自分自身です。
…………(決めるのは、自分)
しかしながら、土のないところに芽はでないように、なんの知識も考えも持たない人間に、何かを判断する能力は育ちません。一時の感情や欲により、楽な方へ流されるだけです。そうならないために学びましょう。死生観は土壌になります。そこにどんな芽がでるかは、土壌の豊かさに左右されますよ。
かく言う私も、100回の人生を経験し、今が101回目なのですが、これまではあまり充実した人生というものを送っていないように思います。
(………………―――ん?)
しかし今回の101回目は、充実した毎日を送りたい。自分はやりきったんだと、胸を張りたい。それが歴史に名を残すような大義じゃなくていい。自分なりにやれることを、やりきって終わりたい。
桜さん遥さん、そしてゆにこさんとの出会いが……―――私にそう思わせてくれました。
…………………。
(……………んんッ!?)
(すごい良いこと言ってるけど、今すごい情報でたよね!?)
(え、なに……転生、的な!?)
(101回目!? 初耳だよ!)
今回は生と死、それから間にある老化について、三つの大きなブロックに分けて話したいと思います。まずは『生命』について、一緒に学んでいきましょう。
生きてるってどういう状態? ―生命の定義―
さっそく質問です。生きてるってどういう状態でしょう?
え、どういう状態だろ?
壮大すぎる質問
……死んでない、じょうたい
死んでいない状態が生きている。なるほど。それでしたら、死んでいるのがどんな状態か考えると分かりやすいかもしれませんね。
息してないとか?
心臓が止まってるとか
食べない
土にかえる
たくさん出ましたね。その逆で、息をしている、心臓が動いている、食事をとる……土にかえる、は形を保てないということなので、逆は体の形を保つことができる、ということになりますね。
息してて、心臓が動いてて、食事して……自分の形を保っている……
それは生きてると言えそうだね
素晴らしいです。生命の定義をすべて言ってくれました。
ていぎ……
つまり、どういう区切りで一個の生命体とカウントするのか、その条件のことを定義といいます。生命の定義は、多くはこんなふうに言われます。
『生命(細胞)の定義』
- 外界と膜で仕切られている(境界性)
- 代謝を行う(恒常性)
- 自己複製を行う
1,外界と膜で仕切られている
細胞は細胞膜に包まれており、外界との境界を設けています。私たちヒトも、皮膚という膜に覆われているため、中身がこぼれてその他と混ざり合わず、その他と区別され個体とみなすことができます。
2, 代謝を行う
代謝とは、体内の状態を一定に保つため行われる化学反応のことです。具体的には、食事によって取り入れた栄養を呼吸によって燃焼させエネルギーを作りだすことや、古くなった細胞を新しいものに入れ替えること……生体内で行われる化学反応や、エネルギー変換を代謝といいます。
3,自己複製を行う
自己複製とは、要は細胞分裂です。私たちの中の細胞は自己をコピーして分裂し……つまり新しく生まれます。一方で、一定数分裂を繰り返した細胞は、それ以上分裂することができず、垢や便として排出されてしまいます。つまり死です。
え、垢とかって、死んだ細胞なんだ……
なんかこれって……私たちの中では、常に細胞が生まれたり死んだりが繰り返されてるってことですか?
まさにその通りです。私たちヒトは、37兆個の細胞で形作られていますが、常に細胞を入れ替えながらこの数を保っているわけです。
そのわりにはなんていうか、外からは全然分かんないですよね。中ではそんなに動いているのに
私たちを構成する細胞が入れ替わっているのに、はた目にはなにも変わっていないように見える。それが不思議だということですね?
はい、不思議ですね
それは、こう考えると分かり易いかもしれません。
たとえば、”株式会社ぶんじや”という会社が創設されたとします。働いている人員がじょじょに入れ替わっていって、4年後には初期メンバーがひとりも残っていなくても、”株式会社ぶんじや”であることに変わりはない……。
なるほど! そう言われると確かにそうですね!
このように、”常に変化して動くことで、同じ形を保っている生命特有の原理”を生物学者の福岡伸一さんは『動的平衡』と表現しています。生物は合成や分解を繰り返し、絶えず動きながら均衡を保っているのだと。
変化してない、じゃなくて、常に変化することで変化していないように見える……なんか深い
それでは、この入れ替わりのサイクルは、私たちヒトだとどれくらいの期間で起こっているでしょうか。
- 皮膚 4週間
- 血液 4か月
- 骨 4年
おー……狙いすましたかのような”4”縛り
まるで死(4)を暗示をしているかのよう
一番長いのが骨で4年なので、4年前と現在では体を形作る細胞はすべて別の細胞ということです。
4年で別人って感じですね
ただし心臓と脳の神経細胞は生涯同じものが使われます。神経細胞が入れ替わってしまうと、記憶を維持できませんからね。ちなみに神経細胞が一番多いのは幼少期で、あとは減っていくばかりなんだそうです。
へえ、体内のどこにあるかで、うまいこと役割が分かれてるんですね
ちなみに髪の毛は死んだ細胞です。『女の命』と言われるほど印象的なパーツですが、床に落ちてしまえばただのゴミですもんね。おもしろいですよね。
……はあ
それでは話を戻しましょう。生命の定義は分かりました。しかしなぜ、生命は自己のコピーを作り、代謝を行い、外界と仕切られているのでしょうか?
……うーん、なんでだろ?
ひとつ言えることは、生物は最大限無駄をそぎ落とし、生存に有利な特性は残るよう進化するということです。
無駄をそぎ落とす……あれ、ムダ毛は?
あー、ムダ毛! そぎ落とされてない
ムダ毛と言いますが、今残っている毛には意味があります。
主には性器と脇の毛ですが、どちらも縮れていて思春期に生えてきます。縮れているのは摩擦を減らすためです。わき毛は腕を動きやすくし、性器の毛は保護や性行為中の摩擦を軽減させるのに一役買っています。
なぜ思春期に生えるのか? それは性フェロモンを出す役割があったからです。この2つの毛の根元には、匂いのある汗を出す分泌腺があり、毛に付着することで拡散されて異性を惹きつける効果があったと考えられています。
分泌液というのは汗と違い、様々な成分が含まれているため、匂いだけで家族を識別でき、体調、体質、年齢なども分かったそうです。
大昔、ヒトの嗅覚がもっと鋭敏だった頃の話ですけどね。今ではフェロモンとしての役割はほとんど果たさなくなっているそうです。
へえ~これは本当にへえ~ですね。毛だけに
…………って、なにも掛かってないじゃん! どういう意味なのかちょっと考えただろ!
たとえば、テレビの液晶を外して中身を見たとき、そこに無駄な配線と意味のない基盤が置かれてあり、きらきらのビーズで無駄な装飾が施されていることはまずありません。
……ビーズはちょっとうれしいかも
すべての部品には意味と役割があり、あるべき場所に収まっています。生物も同じです。なんの役割も果たさない臓器が詰めてあったり、血が通っていない空洞の血管が組み込まれていることはないですよね。
欠陥住宅みたいに謎の空間はないわけですね
その通り、必要だから備わっているわけです。私たちが忌み嫌う『老化』や『死』すらも、生存に有利だから獲得してきた能力だといえます。
えっ
老化するのも死ぬのも、必要ってこと?
逆に死なない細胞って、ガン細胞ですからね。
がーーーん
え、ガンってそういうことなの!?
必要な分だけちゃんとバランスよく細胞が働くからいいのに、ガン細胞はきちんと死なずにところかまわず増え続けるから腫瘍化して、みんなの迷惑なんですよ。
めっちゃ空気読めないやつじゃないですか
あ、あとあたしは感情邪魔だと思います。負の感情は本当にいらないです
あー、遥さんは怒りっぽいですもんね。ガサツで粗野で怪力だし……まさにメスゴリラといったところですもんね。
あれ? 唐突なディス?
感情はヒトを行動させるためのシステムです。怒りは敵に対応するためですね。それにヒトは集団で生き延びてきたので、1人でいると孤独感を感じるようにできています。
それでか……1人でいると夜にのみ込まれそうになるんですよね
そんなこと言って、桜さんもすっかりセンチメンタル思春期ガールですね。
え?はあ……
センチメンタル思春期ガール……(ボソッ)
うっさい繰り返すな 無駄に語呂いいんだよ
センチメンタル思春期ガール(ヒソッ)
だまれメスゴリラ
さあ、今まで話してきたように、一見効率が悪いように見えても、生存に必要だからこそ生物はあらゆる能力を獲得してきました。
その根源ともいえる、生物を生物たらしめる源の機能、『境界性、代謝、自己複製』は、どのように獲得されたのでしょうか?
順を追ってみていきましょうね。
生き物はどうやって生まれた?
それではまたまた質問です。生き物はどうやって生まれたでしょうか?
え、どうやって生まれたんだろ?
壮大すぎる質問パート2
…………アダムとイブ
キリスト教だと、神様がアダムとイブという最初の人間をつくりましたね。ゆにこさん、よく知ってましたね!
えへん
でもよく考えてみると、アダムとイブが居たエデンの園には、すでに植物や果実、蛇など、他の生物も存在していましたね。
そっか、あれは最初の人間ってだけで、最初の生き物じゃないんだ
最初の生き物ってなんだろ?
生命の基本単位は細胞です。つまり、最初に生まれた生命と呼べるラインは細胞だと考えていいでしょう。
生物は細胞一個で個体として成立する単細胞生物か、複数の細胞で構成された多細胞生物に分類されます。
先ほどお伝えした通り、私たち人間の細胞は37兆個もあるので、多細胞生物ですね。というか、目に見える大きさの生き物はたいてい多細胞生物です。
そういえば、「この単細胞!」って悪口でいいますよね
ひとつの細胞から成る単細胞生物のシンプルなつくりと同じように、単純な考え方の人に向けて使われますね。
ゆにこ
あい?
この単細胞め!
……あい
こういうことですか?
……自らイメージダウンしていくそのスタイル、嫌いじゃないですよ。
うぃ
それでは、ここで疑問です。最初の生命と思われる細胞ですが、この細胞というのは、なにでつくられているのでしょうか?
んー……っと
ぶー、時間切れです。答えは『この世界の物質はすべて原子で出来ている』でしたー。
わー腹立つひっかけ
小学生か
こちらの元素周期表をごらんください。
うわあ……授業で習ったやつ……
あたしダメなんですよね……たぶん、表恐怖症だと思う
表恐怖症……初めて聞きました。でも大丈夫です! なんたって生き物はみんな、赤丸で囲んだ6つの元素しか使わないんです! 覚えるの楽ちんです!
6つ!? 118種類もあるのに6つですか? ずいぶんシンプルですね
ほぼ酸素なんだ……ほぼ酸素で出来てるっていうことの意味は分からんけども
そもそも元素って言ったり原子って言ったり、そこがもう混乱ポイントなんですよ
そう言うと思いまして、きっちり説明できるよう調べておきました。
(よ、読まれてる……!)
物質をこれでもかと言うほど分解していくと、原子という粒に行きつきます。物質を構成するブロックと考えましょう。この世の森羅万象すべては極小の原子というブロックで出来ているわけです。
そして元素は、ブロックの種類のことです。
ブロックに色や形で違いがあるのと同じように、原子にもそれぞれ性質の違う種類に分けることができます。それが元素です。
- 原子→物質を構成する粒
- 元素→粒の種類
???
ゆにこさんが一発で分かるように、ゆにこさんの大好きなマインクラフトというゲームを例に説明いたしましょう。
あ、マイクラだー
マイクラの世界はすべてがキューブ型のブロックでできています。このブロックにはいろんな種類がありますが、総じて原子と呼びます。そして石ブロック、土ブロックなど、ブロックごとの種類を元素といいます。
- キューブ型ブロックの総称→原始
- キューブ型ブロックの種類→元素
そしてこのブロックには、原木ブロック、羊毛ブロック、砂ブロックなど、それぞれ名前があるわけですが、元素の場合はブロックごとの名前を上の元素周期表のように、アルファベットで表しているわけです。
ゆにこさん、ご理解いただけましたか?
!!(コクコクコク)
分かっていただけたようで良かったです。そして私たち生き物は、さきほどお伝えした6つの元素ブロックでつくられている、というわけです。
ん~でも……そんなことってあるのかなあ 生き物ってすごく複雑なのに
本当に不思議なことですが、生き物と物体は元素の組み合わせ方が違うだけなんです。生物は特有の元素組成を持っているんですね。
……水って水素と酸素で出来てますよね?
H2Oですね。
でも水素と酸素ってブロックは生き物にも使われてますよね。水にさらに4つブロック足したら、生き物になったっていうんですか?
そういうことです。マイクラの世界の生き物はモブと呼ばれますが、世界を構成する素材とまったく違う素材が使われているようには見えませんよね。モブもやっぱりキューブ型のブロックでできています。けれどモブはモブ特有のプログラムをされているため、ワールド内をランダムに動き回っているわけです。これが生き物です。
なるほど……もはや不思議すぎて不思議じゃないな
逆にね
そして生き物が死ぬと、たとえばタンパク質なんかは分解されるわけですが、このとき生き物に使われていた元素が消えてなくなるわけではありません。組み合わせが変わるだけなんです。
あ、さっき言ってた生物特有の組み合わせじゃなくなるってことですか?
そのとおりです。その証拠に生きている状態と死んだ状態で重さは変わりません。つまり死という現象は、生き物特有の元素組成が解かれるということなんですね。生き物を形作っていたブロックは分解されるわけですが、ブロック本体はなくならず、組み合わせが変わるだけなんです。
なるほど……不思議すぎて不思議すぎるな
それもう感想が感想じゃないだろ
それでは、元素はどうやって生き物になっていったのか? マイクラはPCでつくりますが、生き物は自然がつくりました。とてつもない長い時間をかけて……―――さあ、地球ができた46億年前までさかのぼりましょう。
1,生命誕生
1,原子スープ
できたてほやほやの原子の地球は、溶岩や硫黄ガスが噴き出し、さらには宇宙から強い放射能や紫外線が降り注いでいました。とても生き物が生きていけるような状態ではありません。しかしこれが、化学反応を引き起こすという点では好条件でした。
水、二酸化炭素、メタン、アンモニアなどの無機物に、稲妻や太陽光などのエネルギーが与えられて化学反応が起こり、生き物を構成する重要な材料(有機物)が現れました。
- ・タンパク質の材料となるアミノ酸
- ・遺伝物質の材料となる、糖や塩基
あ! さっき言ってた細胞の材料ですね! アミノ酸ってよく聞きますよ
アミノ酸って、やっぱ重要なんですか?
重要どころか、私たちの体を構成する主成分、タンパク質の材料ですよ。クッキーにおけるバター、ハンバーグにおけるお肉、アニメにおける主人公くらい主要な存在ですよ。
そ、それは……かなり重要……
というか、いないと成り立たないレベル……
タンパク質は20種類のアミノ酸が組み合わさってできていて、体のいたるところで様々な能力を発揮します。
筋肉や臓器、骨、毛髪などの体の組織から、ホルモンや免疫物質などの普段その存在を感じない大事な成分まで……それらを作るのに欠かせないのがタンパク質です。
その昔、生命の本質はタンパク質だと考えられていた時代もあったくらいです。
というのも、1930年代『遺伝子は大量の情報を担っているのだから、きわめて複雑な高分子構造をしているはずだ』と予測されていました。
細胞に含まれる高分子で複雑なもの……真っ先にタンパク質に白羽の矢が立ちます。タンパク質をつくるアミノ酸は20種類もあるのです。これに対し、DNAを構成する核酸はたった4種類しかない……。4種類……心もとない……。
20種類の方が複雑なことが出来そうです。レゴブロックにしても、1個の建造物を作ろうと思ったらもっと種類がいります。この複雑な生命をつくる遺伝物資はきっと特殊なタンパク質だ!、というのが当時の常識でした。
しかし研究が重ねられ、遺伝物質がDNAであることは、みなさんご存知の通りです。
無機物から生き物ができた、というこの仮説を『化学進化説』と言います。
そしてこの有機物は、常に熱エネルギーが供給される海底火山(熱水噴出孔:地底のマグマに温められ、高温の水が噴き出す場所)のような場所で生じたと考えられてます。
ここまでの話をおさらいしてまとめましょう。
メタン、二酸化炭素、アンモニア、水などの無機物に、”太陽光”、”雷の放電”、”紫外線”、”放射線”などのエネルギーが与えられ、熱水噴出孔で生命の材料となる有機物(生命の材料)が発生しました。
その材料はこちら→”アミノ酸”や”核酸”、”塩基”、”炭水化物”など。
これらは海の中に溶け込み漂っていました。そしてお互いに反応することによって、いよいよ一大イベントがおこります。
並外れた特殊能力を持つ分子の発生―――その能力とは、自分をコピーするというもの……―――自己複製子(RNA)の誕生です。
2,自己複製子(RNA)
あるとき偶然に、とびきりきわだった分子が生じた。それを「自己複製子」と呼ぶことにしよう。それは必ずしも最も大きな分子でも、最も複雑な分子でもなかっただろうが、自らの複製を作れるという驚くべき特性を備えていた。
『利己的な遺伝子(The Selfish Gene) 』 著:リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)
じこふくせい……
なにそれカッコイイ……
これはたった一度きり生じた大イベントであり、現存するすべての生物はこの自己複製子から分岐した子孫なのです。大腸菌もシイタケもテナガザルも、鷲も人間もG(ゴキブリ)も、元を辿ると、この1個の自己複製子に行きつきます。
なんでGってぼかして言ったあとで、わざわざ()内に書くんですか。なんの配慮だったんですか
みなさん気になるのは、その仕組みですよね。自己複製、と一口にいっても、実際どういう段階を経て複製がなされるのか。ざっくりの流れはこんな感じです。
※すみません、一番右の画像はA,C,T,Gになっていますが、これはDNAの塩基です。DNAとRNAはほぼ同じ構造で、このあと詳しく説明するのですが、RNAの塩基はA,C,U,Gで、T(チミン)ではなくてU(ウラシル)が使われます。
液滴
生命の材料となる有機物が、どろどろに溶け込んだ液滴という塊の中でくっついたり離れたりを繰り返しています。まだ生命の定義である『境界性』もゲットしていない状態です。
このとき、生命誕生に重要だったと考えられる条件がもうひとつあります。それは太陽との程よい距離です。
太陽との距離?
ええ。太陽と近すぎれば、これらの生命の材料となる有機物も、水も、燃えてなくなってしまいます。かといって、遠すぎればすべて凍ってしまう。
へえ、野菜炒めするときに絶妙な火加減が大事なのと同じ感じですかね
違います。この太陽との程よい距離を『ハビタブルゾーン(生存可能領域)』と言います。こういった環境の良さもあって、どんどん化学反応がおこり、液滴の中には最初の遺伝物質と考えられるRNAも登場しています。
RNA(リボ核酸)
リン酸、糖、塩基という3つの分子がくっついた『ヌクレオチド』というひと固まりのブロックを基本とします。塩基は性質の違う4種類(A:アデニン/G:グアニン/C:シトシン/U:ウラシル)があり、これらが繋がって、ひものような細長い構造をつくります。
リン酸、糖は一緒なんですが、塩基だけは4種類あるんですね。それぞれの塩基の頭文字をとって、A・G・C・Uと表記されます。
このように塩基違いのヌクレオチドのつながりを、『塩基配列』と言います。
それではいよいよ、自己複製の仕組みです。さきほどお伝えした4つの塩基はですね、それぞれ対となるペアが居ます。つまり、決まった相手とくっつきやすい性質があるんですね。
自己複製
A:アデニンとU:ウラシル、G:グアニンとC:シトシンがくっつきやすい性質を持ちます。
- A
- U
- C
- G
- C
- A
↑このように縦に並んでいるひも状のRNA分子があるとすると……
- AーU
- UーA
- CーG
- GーC
- CーG
- AーU
↑というように、対となるヌクレオチドブロックが横にくっついてきます。AとU、CとGは運命の赤い糸で結ばれた恋人どうしなので、出会うやいなやくっつかずにはいられません。こうして二本鎖の構造になるわけです。
しかしこの2人の赤い糸は、熱やアルカリの影響によって、あっけなく縦に解離してしまいます。これは恋人にとって、親の反対や喧嘩などによる障害を乗り越えられず、結果別れてしまったという感じです。
ばいばい
- A U
- U A
- C G
- G C
- C G
- A U
こんなふうに、アツアツだったカップルは離ればなれになってしまいます……。
でも大丈夫!!
- AーU UーA
- UーA AーU
- CーG GーC
- GーC CーG
- CーG GーC
- AーU UーA
お互いにまた運命の相手とくっつけますから!そしてまた離れ離れになり……でもまた恋人をみつけてはくっついて……
- A U U A A U U A
- U A A U U A A U
- C G G C C G G C
- G C C G G C C G
- C G G C C G G C
- A U U A A U U A
また離れて……ほら、おんなじ並びのRNA分子が増えました!
このようにして、同じ塩基配列のRNA分子がどんどん増えます。これが自己複製の仕組みです。
な、なるほど……!! そういうことだったんですね! 一本目が型の役割をしてて、どんどん量産できるんですね!
分かれた側もまた型の役割となりくっついて、分かれたらまた型となり……こうして同じ配列がぽこぽこ増えていきます。すごいですよね、こんなやり方。
ぱずる……
あー……確かにパズルみたいだよね。ピースが一個あれば、そこに合う形と絵のピースはおのずと決まってくるもんな
3,安定性
自己複製の仕組みは分かりましたね。くっつきやすい性質の塩基があるので、その性質を利用することで、もう一方の並びを指定できるんですね。
なんか、しっかり分かりやすい仕掛けでしたね
RNAには遺伝子の基となる3つの特徴があります。ひとつ目はすでにお伝えしましたが、『自己複製能』。ふたつ目は『自己編集能』です。
自己編集?
自分の一部分を切って別の場所につなげたり、部分的に二本鎖の立体構造になったり……ブロックの組み合わせを自在に変えられるということです。そうすることで、パターンの違う配列を生み出せますよね。
いろんな種類の自分をつくりだせるってことですかね
そういうことです。初期の自己複製マシーンでは壊しては作り直すを繰り返すことで、安定して増えやすい配列を模索しやすかったのだと想像できます。これは現代で言う多様性です。
おー、多様性。最近よく耳にしますね
多様性とは『とにかく種類がたくさんある』ということ。言ってしまえばファミレス戦略です。
ファミレス戦略?
フランス料理店とかパスタ屋さんとか、そういう1点突破型の飲食店とは違い、ファミレスはとにかくメニューの豊富さで勝負します。
ピザやパスタなどのイタリアンから、うどんや御膳などの和食メニュー、鉄板のハンバーグ、さらにはスイーツにいたるまで幅広い食品が提供されています。
その中でも人気のメニューは長く提供されて生き残りますし、逆にぜんぜん人気のないメニューは自然と消えますよね。人気者の栄光をしり目に、幾千ものメニューが去っていったことでしょう。
こうしてハンバーグやオムライス、お子様ランチなど、いわゆる定番のメニューというのはおのずと決まってきます。メニューが最適化されるわけです。
それでは、この最適化はなに対して働いているのでしょうか?
えーっと……需要?とか
まさにそうですが、需要とはなにで決まるのか。それは環境です。
たとえば男子校の近くのファミレスなら、食べ盛りの高校生が好む、からあげやハンバーグなどのガッツリ系の需要が高まるでしょうし、逆に肉や揚げ物はちょっと重たい……というシニアが多い地域なら、あっさりした魚定食やうどんといったサッパリ系が人気を博すでしょう。
つまり客層によって需要が違う。その店舗の立地という環境によって、メニューは自然淘汰され、環境に適応していくわけです。
じっさいにはファミレスは全国チェーンなので、一部の店舗だけであのメニューがない、ということはないですが、つまり多様性とは、とにかくたくさんの種類があるということ。その中で環境に合ったものが生き残り最適化されていくのを自然淘汰と言います。
まだ生物にもなっていない頃からそんなに厳しい戦いをしているなんて……
結果、次のような特徴のRNAが生き残っていったと考えられます。
- 長時間存続できる
- 複製スピードが速い
- 複製が正確
これファミレスだと『うまい!』『安い!』『速い!』みたいな感じですね
- 長時間存続できる……安い!
- 複製スピードが速い…速い!
- 複製が正確……………うまい!
ホントだ!うけるw 生き物もファミレスも同じ戦略で生き残ってるなんて
おもしろいですね。
そういえば、DNAは? あれは関係ないの?
あ、それ思った。DNAは聞いたことあるけど、RNAはなんかマイナーなイメージ
DNAが出てくるのはもっと後ですが、実はRNAとDNAはほとんど同じつくりをしています。というかいっぱい作られたRNAの中からDNAが生まれました。DNAは2本がしっかり支え合っているため切れにくく壊れにくいです。なのでより長くなることができます。
長いと何かいいことあるんですか?
長い分より多く遺伝情報を持つことが可能になります。
あ、なるほど
■RNAとDNAの違い
RNA
- ・糖→リボース
- ・塩基→アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、T(チミン)
- ・一本鎖構造で不安定
- ・自己編集できて変化しやすい
DNA
- ・糖→デオキシリボース
- ・塩基→アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)
- ・二重らせん構造で安定している
- ・遺伝情報を長期間保存するのに適す
2つの違いはこんな感じですね。初期は変化しやすいRNAがぶいぶい言わせていたのですが、先ほどのように速い!安い!うまい!などの、変化させずに保管しておきたい特徴が出てきます。そうなってくると時代は安定志向へとシフトチェンジして、遺伝情報の保持は安定したDNAが行うように変化していったんですね。
なんかあれみたいですね。ちょっと前は男の人に求める要素に『三高』ってあったじゃないですか
あ、知ってる! ”高身長” ”高学歴” “高収入”だよね!
それが不景気になると”平均的な年収” “平凡な外見” “平穏な性格”の『三平』を求めるようになったらしいね
これは確かに、勢いのある攻めの姿勢のRNAが『三高』、とりあえず安定重視のDNAが『三平』というふうに当てはめられますね。
こういう時代の変化が遺伝物質にもあったってことですね
4,競争
そういえば、ちょっと気になったんですけど……いいですか?
はい、なんでしょう?
さっき、あたしたち生き物は元を辿れば最初の自己複製子に行きつくって、言ってたじゃないですか。現存する生き物はみんな、その1個の子孫だって
そうなります。
それって……おかしくないですか?
というと?
だって、あたしたちは石とか砂とか、そういう無機物を食べて生きてないですよ。野菜も、肉も米も、食べるのは全部同じ生き物ばかりです。……だから……それは……それって……
……ともぐい
! そ、そうですよ! これは壮大な共食いだ! 同じ祖先から生まれた、いわば仲間なのに、なんであたしたち生き物は、生き物しか食べないんだ!
……遥さん……。
……は、はい
実にナイスな疑問です! ぜひともベストクエスチョンザアワードに選ばせていただきたい!
(ベストクエスチョンザアワード……!だっさ……!)
それではお答えしましょう。話は自己複製子がどんどんコピーを作っているところに戻ります。
『長く生きれるもの』『複製のスピードが速いもの』
あと『複製が正確なもの』。そういう安定したやつが増えていったんですよね?
はい、安い・速い・うまいです。しかしここで問題にぶち当たります。複製をつくるための材料を確保するのが難しくなるのです。そこで役に立ったのが、RNAの3つ目の特徴『壊れやすさ』です。
コピーをつくるための材料はどんどん使い果たされ、数少ない貴重な資源になったことが想像されます。
そうなると、RNAはどういった行動にでたでしょう?
最良の材料がありました。それはRNA自身です。あるRNAは、ライバルとなるRNAを科学的に攻撃することでバラバラにしました。そうしてゲットした材料で、自分のコピーを作るのです。
作っては壊しを繰り返すわけですね。これは『死』が存在する起源だと考えられています。この頃のRNA分子はまだ生物の前駆体のようなものですが、今の生き物が最終的には死という最後を遂げるのは、このころから始まっているのです。
自分は死ぬけど、死ぬことで自分の材料を使いまわせるから、周りは生きれる……そういうことですか?
そういうことです。リサイクルをしているんです。人がペットボトルをリサイクルするのと同じです。
し、しかもこれって……
そう、食の始まりとも言えますよね。
な、なんと……!
私たちが現在行っている食はもっと複雑ですが、自分と同じ構成要素を持つライバルを喰らい、自らのコピーを生み出すというのは、私たちが栄養をとる循環の原型になるでしょう。
私たちがタンパク質の含まれた食材を食べると、体内でどうなるのでしょうか。
答えは単純。タンパク質は体の中でいったんアミノ酸に分解され、それを材料に別のタンパク質がつくりだされるのです。
まさにこの頃のRNAがやってることですね
食事って、そういうことなんだ……食べることで自分のパーツゲット!みたいない……
その通りです。ゆにこさんも分かりましたか?
…………
分かりづらかったですか。例え話をしますと……ゆにこさんはブロックで法隆寺がつくりたくなりました。しかしその場には数個のブロックしか残されていません。前につくったエッフェル塔があります。エッフェル塔に使っているブロックを使えば、法隆寺をつくれそうです。
さて、ゆにこさんならどうするでしょう?
アマゾンでブロックぽちる
そうですね、エッフェル塔を壊して法隆寺をつくりますよね。
ぽちる
私たち生物にしても同じことです。必要な材料でつくられたライバルをばらばらに分解し、その構成要素をゲットするというのは、まさに一石二鳥……ライバルを減らすと同時に食物を手に入れているのです。
5,生存機械
さあ、次はなにが起こったでしょう。彼らは自己複製を行い、その中でも増えやすい性質のものがよく増えて、材料が足りなくなると前に作ったもの(ライバル)を壊し、その材料をもとに新しくつくり変える、ということができるようになりました。けれどまだ生き物とは呼べず、RNAやタンパク質が混ざったぐしゃぐしゃの液滴です。
またきっと、あれですよね。たまたまちょっと有利な変化をするやつが出てきて、そいつが増えていくサイクルじゃないですか
素晴らしい。まさにその通りで、膜の中に入るRNAが現れました。
おおっ、ついに……! 境界性が!?
この膜は油の粒のようなもので、たまたまその中に囲われた液滴(RNAも含まれている)は、自己複製するための材料ごと囲われているので、安定して複製を行うことができます。
やっぱり有利な変化でしたね
しかし一番の利点は、遺伝物質を隔離できることです。
あ、そう簡単に壊されないんだ。囲まれてるから
はい、遺伝情報を守れるのは重要なメリットでした。
たとえ試行錯誤を繰り返し、至高の料理をつくることができたとしても、レシピを残しておかないと2度と同じものは作れないでしょう。こうして囲まれたことでレシピ(遺伝情報)は守られ、油という袋の中で、優秀なレシピをどんどん増やすことができました。
世界に境界線を引いて、自分だけの小さな世界をつくったようなイメージです。
そしてその後、袋を分割して袋ごと増えていくようになります。そうなると今度は先ほどのような競争が袋単位で繰り返され……やがてこの袋が最初の生命、細胞になったということです。
つ、ついに……!! やっとここで完成するんですね!
ええ、ようやくです。けれど終わりではありません。
こうした自らの容れ物……まるで家を作り上げていくように、安定した居場所を作りつづける自己複製子たち。この家のことを、生物学者リチャード・ドーキンスは『生存機械』と表現しています。
自身を維持するためにも、ライバルに出し抜かれないためにも、生存機械はより大きく複雑に、生きることはどんどん困難になっていきます。
自己複製子たちの試行錯誤は、いったいいつまで続くのでしょう?
いまや彼らは、外界から遮断された巨大で無様なロボットのなかに集団となって群がり、曲がりくねった間接的な道を通じて外界と連絡を取り、リモートコントロールによって外界を操っている。彼らはあなたのなかにも私のなかにもいる。彼らは私たちを、体と心を生み出した。そして彼らの維持こそ、私たちの存在の最終的な論拠だ。彼らは自己複製子として長い道のりを歩んできた。いまや彼らは遺伝子という名で呼ばれており、私たちは彼らの生存機械なのである。
『利己的な遺伝子(Tha Selfish Gene) 著:リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)』
私たちは遺伝子を保管するための動く機関のひとつであり、40憶年が経過した今もなお、この試行錯誤は続いている―――……そういうお話でした。
パチパチパチパチ(拍手)
ぺちぺちぺちぺち(拍手)
どうでしょう?最初の生命、細胞ができるまでの流れはだいたい掴んでいただけたのではないでしょうか?
はい。壮大な話で、楽しかったです
言ってみればヒトというのは、皮膚というひとつなぎの大袋の中で、絶えず化学反応を起こし変化を繰り返す……繰り返すことで大袋を維持している細胞のコロニーなんですね。
ただちょっと不思議なんですけど、なんで1個の自己複製子から、今の多種多様な生き物に分岐していったって分かるんですか?
たしかに。こんだけ色んな生き物がいるんだから、それぞれ違う祖先から派生してるって考えた方が自然な気もするよね
これははっきり分かっています。同じシステムを持っているからです。
例えば、私たちヒトと魚は一見するとぜんぜん違った生物ですが、同じ脊椎をもっているという特徴があります。これはつまり。私たちが枝分かれする前の、共通の祖先が脊椎を持っていたため、同じシステムが採用されているのです。
これをもっと広い視野で見ると、すべての生き物は、アミノ酸を繋ぎ合わせてタンパク質を作るための”リボソーム”という装置をもっています。
つまり、最初に登場した細胞が持っていたから、現存する生物すべてがもっているわけです。
そして『死』も、最初の生命が持っていたから、生き物全員が持っている性質なんですね。
なるほど
ようやく最初の細胞ができましたね。そしてこの細胞が進化していき、一番最初の枝分かれが訪れることになります。細菌と古細菌に分かれるんですね。
その後、脊椎動物や節足動物など、あらゆる種類に分化していくわけですが、この細菌と古細菌に分かれる直前の細胞には名前がついていて、こう呼ばれています。
Last Universal Common Ancestor 略してLUCA(ルカ)。”全生物に共通する最終祖先”という意味の言葉です。
え、かっこよ。LUCAかっこよ
…………
ね、めちゃかっこいい
……めちゃかこいい
そうですか、かっこいいですか。言うかどうかちょっと迷ったんですが……これ私です。
…………………………。
…………………………は?
ほら、さっき言ったじゃないですか。今の人生は101回目だって。LUCAが私の1回目です。
……………ふ~ん。
みっちゃん……すごい……!
そんなそんな、すごいだなんて。まあすべては私あってのみなさん?っていう感じには……なり、ますかね。あはは。そう考えるとまあ確かに?けっこうすごい……ってこと、なのかなあ。
……どんな感じなんすか? 細胞のときって
んーなんか海の中を漂ってて、浮かんでるなあ、あったかいなあ、って感じですね。あーいける気がするーって思ったら、いつのまにか自分が分裂してた感じですね。
まだ脳ないですよね?
え?
記憶するシステムまだないんじゃないですか?
へ?
覚えてるはずないんじゃないすか?
………………………。
私の特殊な記憶構造については長くなるため割愛させていただきまして、生命誕生の話をまとめますね。
ジー――――……
まとめます。
さあ。全生物に共通する仕組みを持つ祖先、私ことLUCAから、細菌と古細菌、というまず始めの分岐が訪れます。
先ほどお伝えしたよう、遺伝子はより複雑な生存機械を築き、『環境に合わない種類は絶滅』、『合う種類は生き残る』という自然淘汰と進化を繰り返してきました。
ファミレス戦略的に言うと、その店舗の客層に合ってないメニューは消えていくってことですね。
そうして原始の細胞は、細胞同士で融合したり、くっついたまま一緒に活動するようになり、真核細胞、多細胞生物へと進むものもあらわれたのです。
まずはDNAを核の中にしまい込む『真核生物』が現れました。画像の真ん中の原生生物ですね。細胞1個で成り立っているけど、核があるよーという生き物です。
この辺の分類ややこしいですよね
そうですね。『単細胞で核がない』と『多細胞で核がある』の2種類なら分かり易いですよね。
簡単にいうと、間の生き物ってことですよね? 進化の経過で、その2種類どっちもの特性をもってて、『単細胞だけど核はある』っていう原生生物
あーね、そう考えると分かりやすいね
……ゆにこ……
ゆにこさん? どうされましたか?
ゆにこ、ふえない
……あ、もしかして、細胞はぽこんと2つに分かれて増えるのに、なんでゆにこさんは分裂して2人のゆにこさんにならないのか、ということですか?
(コクン)
これは良い質問をいただきました。私たちヒトが死ぬと、37兆個の細胞も一蓮托生で死んでしまうので、細胞内に住んでいる遺伝子からするとたまったもんじゃないはずです。では、私たちはいずれ死ぬのに、遺伝子だけがどうやって生き残るのでしょう?
遺伝子の最前目下の目的は、なにを差し置いても生き残ることです。自分が宿っている生存機械が死ぬと自分も一緒に死んでしまう。これだと遺伝子は途絶えて終わってしまいます。
しかし遥さんと桜さんはご存知かと思いますが、多くの生き物は子どもを産むことで遺伝子を残します。遺伝子からすると、親から子へと『乗り換え』を行うわけです。
そう、有性生殖の登場です。生物の増え方は、分裂によって増える無性生殖と、子供を作ることで増え、自分の遺伝子を託すという有性生殖があります。しかし、なぜ分裂で増える無性生殖だけではダメだったのでしょうか? 性別の起源はどこにあるのでしょうか?
え、性別があるなんて当たり前すぎて、なんであるかなんて考えたことなかったわ
性別の起源って、ぜんぜん聞いたことないかも……。言われてみればって感じだよね。オスとかメスって、どうやって出来たんだろ
ではひとつ、クイズを出しておきます。『オスとメスの一番の違いは何でしょうか?』 次の生老死の『生パート後編』で、有性生殖のお話と、最終的に生き物というのはこの宇宙にとってどういう存在かお伝えしたいと思います!
オスとメスの違い……これはもう一択でしょ
なんでしょうか?
股にブツをぶら下げてっかどうかに決まって……
恥じらいぃいい!!
ぶつのまたさげてかに
むりに真似せんでいい!!
カエルはオスもメスもペニスないので、とりあえず性器の形が雌雄の判別基準でないことは先に伝えておきますね。では次回!
……え。(そうなんだ……じゃあなにが違うんだろ……気になる)
ぶっつのまた、ぶっつのまた